難所1の2:和音跳躍~ネガティブスペースのとらえ方

前回の記事で紹介したシベリウスのワルツの難所。
今回は「難所1」の2つめ、

和音の跳躍

についてまとめます。

この曲の中間部は、このような楽譜になっています。

苦手なのは、主に左手で弾く部分。

ここを前半と後半に分けて考えます。

前半は特に難しくありません。33小節目から34小節目に切り替わる際の、右手の和音移動が少しやりづらいのですが、左手は見なくても弾けるので右手をよく見て弾けばなんとか乗り切れます。
しかし、問題は後半です。
楽譜にも書いてある通り、ペダルを使わないと音がつながらない=和音の跳躍 の連続です。左手だけなら・・・ゆっくり弾けば弾けますが、曲の流れ(しかもvivace)に乗って軽快に弾こうとすると・・・ガタガタに崩れて強引に弾くしかない状態です^^;(私の腕前ごときでは)。
しかし、ここを美しく弾かずしてこの曲の美しさを引きだすことはできません!乗り越えようと日夜練習に励んでいるところです。
だがしかし。
ひたすら「繰り返し」「ゆっくり」「何度も」「千本ノック的根性論」でやみくもに練習してもなかなか成果が上がりません。
そこでこの本で学んだ知識をさっそく活用してみます。

この本の161ページ〜、

ネガティブスペース

の捉え方を取りいれます。


美 しい刺繍をほどこした布が手元にあるとして。「表」には、細部にわたって表現されたイメージがはっきりと見えています。そしてこの布を裏返してみると、不 揃いで混沌とした糸の面が現れます。ただ、この裏の不揃いな糸は、無意味に混沌としているのではなく、刺繍の一針から次の一針へと繋がっている模様です。 美しい刺繍は、表と裏が一体となって成り立っているもの。この裏側の「対象物の間にある空間」がネガティブスペースです。
ピアノでいうと、音符から音符へ移る空間がネガティブスペース。楽譜では、何も書かれていない空白です。


美しい刺繍は表と裏の両方があって初めて形をなすのと同じように、ピアノも「表=音を弾く」と「裏=ネガティブスペース」の双方が合わさって曲という形をなすのです。


跳躍を滑らかに弾くには、楽譜の黒=音符 だけでなく、楽譜の白=空間 も「弾く」というイメージに変えることが大切。ネガティブスペースを無視せず、意図を持って作り出します。

音符と音符のあいだの空間に、具体的な感覚を持つのだそうです。

165ページの譜例7で、具体的にネガティブスペースを図示してあります。矢印は、左の腕が移動するときに空中で描く自然な弧を示しています。

なるほど。空間を描く弧、ですね。

そういわれると、これまでの私は黒い部分=音符ばかり意識して弾いてきました。

今までの弾き方で弾いたときのネガティブスペースは、こんな感じでしょうか。

・ダメな例

左手親指にミスタッチが多い傾向がありました。

さて、これをネガティブスペースを意図的に構成してみます。

楽譜をよく見ると、左手の最高音(小節はじめのベース音は除く)と右手の最高音は同じ音(高さは違う)で呼応しています。

( ゚д゚)ハッ!

見えてきました

まさに、ワルツを踊っている光景そのものです。左手は男子、右手は女性。男性がステップを踏みながら女性をリードして会場左側へと移動していきます。

そうであれば、華麗な足さばきをイメージしてネガティブスペースを描くとこんな感じでしょうか。

・改善例

ポイントは、直線的な移動ではなく弧を描くことと、後半の2小節目は少し「レ」を通り過ぎて戻って着地させることです。大回りさせます。ダンスのイメージでいうと、ここは少し顔を残してアクセント的に大きな動作をしているような情景が浮かんだのでね。


楽譜をよく読むと、あらたなイメージが湧いたのが興味深くて、もう少しじっくり楽譜を眺めてみました。

すると・・・

苦手意識を持っていた後半の左手は、前半の部品がそのままはめ込まれていることがわかりました。

見事に前半の和音を再利用しています。そのまんま。弾きながらなんとなく「規則的な変化だなぁ」と感じていましたが、ここまでキッカリ同じ構成だったとは気付いていませんでした^^;やるな、シベリウス。前半の和音をベースに音を厚くした、というのは後半の実態です。

構成がわかってしまえば、暗譜が苦手な人でも楽に覚えられそうですね。

アナリーゼを先にして弾く方からすると、何を今更?!的な話かと思います。

しかし、いつもの私は分析する前に曲を猪突猛進に練習してきたので、今回の学びは新鮮でした。

今後別の曲に取り組むときも、教訓を生かそうと思います。


音符のない空間『ネガティブスペース』も”弾く”ことを楽しもう♪


楽しく続ける大人のピアノ

楽しみながら憧れの曲に近づいていくために